国連総会でアフリカのトーゴが提唱した、各国の実際の相対的な大きさを反映する新たな世界地図を採用する決議案が採用されました。イコールアース図法という特定の投影法名を出したことで世界地図はイコールアース図法でなければいけないのではと思わせるような報道が相次ぎました。さらには、現在世界中で使用されている世界地図はメルカトル図法で、メルカトル図法自体を否定するように思えてしまう報道もされています。しかし、みなさん地理の教科書や地図帳を開いてみましょう。日本においては、海や航海に関連する地図以外はメルカトル図法はほとんど用いられていません。同じ円筒図法でもミラー図法、ガル図法、正距円筒図法などが世界全図として用いられています。これらも高緯度ほど大きく表しますがメルカトル図法よりも抑えられた大きさとなります。主題図においては、エケルト第4図法やヴィンケル第3図法が多く採用されています。
さて、イコールアース図法とは正積平極擬円筒図法で2018年に作られた新しい投影法です。先ほども書きましたが、日本においては教科書や地図帳では昔から同じ正積平極擬円筒図法を使用してきました。その代表例がエケルト第4図法です。みなさん、イコールアース図法をよく見てください。教科書の主題図と同じですよね。
ですので、ニュースのコメンテーターが今後教育でもイコールアース図法が使われていくでしょう。などと言っておられましたが、もうすでに相対的な大きさが反映されている地図は教育現場では使われているのです。私の手元に昭和62年文部省検定、平成2年改訂検定の教科書地図があります。そこに掲載されている行政世界全図は、イコールアース図法と同じ正積平極楕円図法です。昭和の時代からすでに教育現場ではイコールアース図法と同じ図法で世界を学んでいたのです。
それなのにイコールアース図法が新しい世界地図の概念のごとく報じられるのは、学校で図法について学ぶ機会はないことが、そもそもの原因なのです。みなさんは高校や中学の時に図法の使用方法について学びましたか?もし学んでいればこれほど報道されることはないでしょう。
ちなみにメルカトル図法は角度が正しい地図ですので、航海には必要な地図です。そのほか、今ではWeb地図も位置情報の管理上、メルカトル図法を使っています。つまり、地図は使用用途によって使い分けなければなりません。
また、多くの世界地図がメルカトル図法と同じ円筒図法を使う理由は、紙が四角形だからです。紙面全体に地図が収まるようにミラー図法などを採用するのです。
リコールアース図法の一人歩き報道

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上がイコールアース図法、下が昔から教科書や地図帳で採用されているエケルト第4図法。両者とも面積の正しい地図です。見分けがつきますか?わざわざイコールアース図法に変更する必要ありますか?
昭和62年検定済み教科書。すでにイコールアース図法と同じ図法で学んでいたのです。
改訂 社会科新高等地図(東京書籍)より

空想地図は地理学の主体的な学習に有効か
地図は大地の形態の現状を図示します。しかし、地図は実際の姿でなければいけないのでしょうか。自分の想像の世界を地図化しても、自分が楽しむためであれば問題はないはずです。ただ、他人が地図を利用することはできないのですが。
私は、地理学科の非常勤講師をさせていただいていますが、授業初日は「空想地図」を描いてもらいます。
なぜ空想地図を描かせるのか。
①今までどのような地図を一番多く利用し、学生の地図に対する概念を知るため
②地理学の素養。お手本となる地図や資料がない中で、どれだけ地理的に正確な情報を入れることができるのかを知るため
③地図作成のセンス。お手本がない中で、どれだけきれいに、そして実際の地図らしく描くことができるのか
つまり、空想地図を作図することにより、地図の利用度と読図力、地理学の教養、地図作成における美的感覚がわかってしまうのです。
ということは、空想地図を作ることは、地図学力、地理学力、作図力を楽しく身につけられ、地理学の一番有効な学習なのではないかと(そう考える理由は、いずれ詳細を発表できればと考えています)。
私も幼少の頃、お絵描きは空想地図でした少年時代に妄想していた架空の市を1/20万地勢図レベルで作再現したいと思っているのですが、時間がなく思っているだけで年月が経ってしまっています。
今後の私の課題として、空想地図がもたらす地理学の学習効果を研究しようと考えています。
